私はただいまベトナムに滞在しており、仕事を通してベトナムの文化や人々と触れております。日々過ごす中で、私が個人的に驚いたこと、面白いと思ったことを共有できればと思います。他国の文化・様子を知ることで、自身の生活にその考えを取り入れ日常が少し豊かになったり、改めて日本の良さを知ったりするきっかけになると思いますので、ぜひ読んでみてください!
今回は職場での「お祝い文化」について共有していきたいと思います。「お祝い文化」とは私が勝手に名前を付けたものですが、何か幸せなことが起きるとそれを祝おうとする気持ち・文化があるということだと認識して頂ければと思います。
お祝い文化
日々仕事をしていると、突然デスクに飲み物(ジュース・ミルクティー・コーヒー)を置かれることがあります。大体同じ部署の人からおごってもらうのですが、その理由がその日その日によって異なります。
以下、具体的な事例を共有します。
今日は私の誕生日なので、皆さんにミルクティーを買いました!
大きなプロジェクトが終わったので、今日は俺から皆に飲み物を奢るよ。
だいたいこのパターンが多いので、私も徐々に慣れてきて、自身の誕生日の時には同じ部署の人数分ジュースやミルクティーを配りました。ちなみに発注はネット注文(Uber eatsのようなアプリ)で、頼んでから1~2時間後にはバイク便で配送されるので便利ですね。
ただし、これだけではとどまらず、他にもこのようなパターンもありました。
はい、ミルクティー。
今日は誰かの誕生日だっけ?
いや、実は今まで欲しかった時計を買ったんだ。その気持ちのお裾分け。
時計を買っただけで周囲にジュースを奢るのか!当然どんな時計を買ったか気になって見させてもらいました。この理由がありなら何でもありなんじゃないかと思うくらい衝撃的でした。実際に他にも色んな理由付けがありました。
子供が学校で優秀成績として表彰されたんだ。嬉しいからみんなに飲み物奢るね!
会社が開催した小コンテストで入賞し賞金を獲得したから、そのお金で皆にジュースを買うね!
昨日ベトナムのサッカー代表がアジア大会で優勝した!ジュースを買って皆でお祝いだ!
今日は金曜日で気分が良いからミルクティー買ったよ!
…このように、とにかく口実を見つけては嬉しい気持ちを皆とお裾分けする文化がベトナムにはあります。
お祝い文化の背景
ベトナム人に何故このように些細な事でもお祝いするのか聞いたところ、「その方が楽しいでしょ!自分だけじゃなくて皆も幸せの方が嬉しいじゃん」という返事が返ってきました。確かに周りも幸せだと自身も幸せだと思いますが、日本では誰かの幸せを妬みに感じる人もいるかもしれません。自分なりに考えてみたところ、以下のような背景があるのではと推測しました。
- 貧しい過去に起因した支え合いの文化
ベトナムは1979年まで戦争しており、さらに1976年から1986年は配給時代(社会主義であり、政府が市民の必要な物資を管理し、配給していた)でした。1986年のドイモイ政策により現在の開かれた経済(厳密には資本主義に基づいた社会主義)へと変化し、そこから経済成長を果たして最近比較的裕福になってきた歴史的背景があります。要は、最近まで国民の多くが貧しく、お互い協力し合う雰囲気が出来上がっているためだと考えられます。 - 人生は短いので楽しもうという死生観
ベトナムの平均寿命は約74歳、健康寿命はさらに短く64歳ほどです。日本の場合は男女ともに平均寿命が80歳を超えており、健康寿命も70歳を超えています。実際に回りのベトナム人の話を聞いていると、50歳、60歳で亡くなる方が身近にいることを実感します。(平均寿命が世界一の日本と比較するのはおかしいだろ、と思われる方もいるかもしれないが、実はベトナムの74歳は世界で90位ほどです。)自身の人生が50-60代で終わるか可能性があるため、若いうちから毎日を楽しもう、そのような背景があるのではと感じます。 - 熱帯気候
私が暮らしていたのはベトナム南部のホーチミン市であり、熱帯気候で年間を通して暑い気候、輝かしい太陽、潤沢な雨があります。毎日温かい(暑い)環境で太陽を浴びていると人間不思議と前向きになります。また、元々多くのベトナム人は農家でした。自然災害も少なく農作作物を育てるのに適しているベトナム南部では、あまり将来の備えを意識しなくても潤沢な食料を手に入れることができました。日本は自然災害が多く、さらに四季がはっきりしているため穀物を育てる期間が限定されています。このような国では、近い将来何があるのか分からないので、備蓄を用意するなど将来への備えが必要だったと言えます。このような差もあり、ベトナム南部の人は大らかな性格の人が多く、将来に備えなくても何とかなると思っている人が一定数いると感じます。ゆえに、将来を不安視して生きるより、毎日を楽しもう、お金があるなら使って自分や周りの人間と楽しい時間を過ごそうという人がいるのも納得できます。
※ベトナムでは北部(首都ハノイ)、中部、南部に地域性が分かれており、それぞれ気候が異なり、結果的に人々の性格や考え方にも違いがあると感じます。
最後に
ベトナム人の特有の歴史的背景もあり、自然と「お祝い文化」が生み出されたと考えられます。個人的には、同じ毎日の仕事・生活でも、些細な喜びや楽しみを見つけてそれを皆で祝おうという姿勢は非常に素晴らしいと感じました。実際飲み物という些細なものでも、もらえると周囲は嬉しく思うし、お互いより関心を持つことができると思います。最初は恥ずかしいかもしれないが、何か些細な幸せがあったときにはオフィスでも、家族に対してでも、お菓子や飲み物を配り幸せをお裾分けすることをぜひ試して頂きたいと思います。
我々は他人に幸福をわけ与えることによって自分も幸せになるのだ。
清少納言
些細な幸せを見つける努力、そしてそれを周囲にお裾分けする気持ちをぜひ持って、どのような効果が自身や周囲に与えるかぜひ体験頂きたいと思います。
では、また。ゆとりのある日々を。
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