【海外での生活体験~ベトナム編~】太っている人が美しい!?美の価値観について

文化

私はただいまベトナムに生活しており、ベトナム語を勉強しながらベトナムの文化や人々に触れております。言語を学ぶことでその国の文化や歴史がわかることが多いと感じております。そこで、私が聞いて驚いた点や面白いと思ったことを共有できればと思います。他の国の文化を知ることで、自身の生活にその考えを取り入れたり、改めて日本の文化の良さを知ることができると思いますので、ぜひ読んでみてください!

今回はベトナムでの「太っている」・「痩せている」ことに対する考え方を共有していきたいと思います。実は、ベトナムではふくよかな女性の方が美しいとされてきました。その証拠として、ベトナムの美人コンテストでは少しふくよかな女性が歴代優勝してきました。今では西洋の考え方も浸透しており、華奢な美しい女性も増えているそうです。美しいとはどういうことなのか、無理してダイエットする必要があるのか、そのようなことを改めて考えるきっかけになればと思います。

ベトナムでの美人コンテスト

ベトナムでの美人コンテストは1988年から開催され、2年おきに実施されてきました。通常の美人コンテストのように、数多くの女性の中から選抜された女性のみエントリーでき、その中で最も美しい女性が優勝することになります。その女性の姿を見ると、顔が丸々しており、少しふくよかな女性が多いことが分かります。

<歴代のミス・ベトナム、国内大会>

最近では西洋の考え方もかなり入ってきており、ミス・ワールドを選出する国際的なコンクールに参加する人を選抜するための美人コンテストが2014年以来、開催されることになりました。このように、ベトナムではベトナム国内だけの美人コンテストと国際的な美人コンテストが実施されるようになり、それぞれ異なる美の基準をもとに優勝者が決まるようになりました。国際大会に参加する女性は、ベトナム国内大会と比較すると華奢な見た目の女性が多いと感じます。

<歴代のミス・ベトナム、国際大会>

Miss International 2017 ベトナム代表
https://www.miss-international.org/ より
Miss International 2018 ベトナム代表
https://www.miss-international.org/ より
Miss International 2019 ベトナム代表
https://www.miss-international.org/ より

文法から見える「太っている」の方が良いということ

そもそもの発見としては、ベトナム語の文法を学んでいる際に発見しました。ある状態になったことを表現する際に、その状態を表す形容詞の後に特定の単語を付ける文法があります。形容詞の後に付く単語は2つあり、それらは形容詞が良いことを表すか、悪いことを表すかによって使い分けます。少し分かりにくいと思うので、具体例を挙げて説明していきます。

<具体例>

お金持ちになる: Giàu (形容詞、お金持ち)+lên(形容詞が良い意味であることを示す単語)

貧乏になる: Nghèo(形容詞、貧乏)+đi(形容詞が悪い意味であることを示す単語)  

そこで見て頂きたいのが、太っていると痩せているの形容詞についてです。

<太っている、瘦せているの場合>

太っている: Bèo(形容詞、太っている)+lên(形容詞が良い意味であることを示す単語)

痩せている: Gầy(形容詞、痩せている)+đi(形容詞が悪い意味であることを示す単語)  

なんと、太っているの形容詞は良い意味であるとされており、痩せているの形容詞は悪い意味とされております。あくまで文法上の話ではありますが、従来のベトナムでは太っている方が良い状態であるという価値観があったと言えます。

会話から見える「太っている」の方が良いこと

また、ベトナム人の会話からも同じように読み解くことができます。親しい間柄になると、ベトナム人は時々体重を聞いてくることがあります。その体重を聞いて、「あなたは痩せすぎ、もっと食べたほうが良いよ」と言ってくることがほとんどのようです。これはベトナム人の気遣いであり、健康であってほしいという願いから来るものです(決してあなたを太らせて陥れようという狙いはありません)。

最近の若者では体重を聞くことも減ったそうですが、親の世代、祖父母の世代はまだ体重を聞く文化が残っているようです。このことからも、痩せすぎは良くない、健康的ではないという考え方があります。

「太っている女性」がなぜ美しいのか?

では、なぜベトナムではふくよかな女性の方が美しいとされているのでしょうか。ベトナムは植民地時代が長く、1945年にようやく独立することができました。そこからも苦しい時代が続くも、1986年にベトナム政府が実施したドイモイ政策をきっかけに経済が大きく成長することができました。このように、貧困時代が長かったため、食べ物も少なく、痩せてしまっている人が多くいました。その中でふくよかな女性は健康的でお金を持っていると見られるようになり、痩せている状態は良くないとされてきました。

ベトナムの美の基準は歴史と大きく関わっていることが分かります。そして、最近ではインターネットで世界中がつながるようになり、西洋的な痩せている人が美しいという概念がベトナムに入っていると言えます。

最後に

ベトナムの美しい女性の基準はその国の歴史と深く関わっており、言葉や文化に根付いていることが分かります。メディアに出ている美しい女性はみんな華奢で美しいものの、それは普遍的な美しさではなく、この時代の主に西洋的な価値観が大きいと思います。そして、西洋でもモデルが痩せすぎている問題が指摘されてから徐々に美の基準も見直されていると思います。

美しさは、あなたがあなたらしくいると決めた時に始まる

ココ・シャネル フランスのファッションデザイナー

美しいとは何なのか、メディアの情報だけを鵜呑みにするのではなく、自身が最も自分らしく、健康的でいられる体型をぜひ考えて頂きたいと思います。

では、また。ゆとりのある日々を。

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