私はただいまベトナムに滞在しており、仕事を通してベトナムの文化や人々と触れております。日々過ごす中で、私が個人的に驚いたこと、面白いと思ったことを共有できればと思います。他国の文化・様子を知ることで、自身の生活にその考えを取り入れ日常が少し豊かになったり、改めて日本の良さを知ったりするきっかけになると思いますので、ぜひ読んでみてください!
今回は「相手を気にかける文化」についてお話したいと思います。言葉通り、ベトナムでは相手に対して気にかける習慣・文化があります。ただ、この気にかけ方は日本人の感覚とはかけ離れており、最初はギャップを感じ戸惑いもありました。ただ、本質的には相手に関心を示している・気にしているということであり、日本でも応用できると思います。ぜひ円満な人間関係を築くヒントにしていただければと思います。
相手を気にかける文化
私がベトナムを訪れて間もない頃、周りにいるベトナム人から色々質問されました。その質問はプライベートな内容が多く、ベトナム人の第一印象としてはずけずけ聞いてくる人たちだなぁというものでした。私は男なのでそこまで気にしないものの、女性によっては不愉快に感じる方もいるかもしれません。以下は実際に私が質問された内容です(男性・女性関係なく聞かれます!)

今何歳なの?

結婚しているの?子供はいるの?

生まれはどこなの?日本のどこ?

ベトナムではどこに住んでいるの?

体重何キロ?
このような質問を初対面で普通に聞かれます。また、お互いのことを少し知った後も、色んな質問をされます。
家族は元気なの?
子供は元気?
日本に帰ってるの?
親は元気?
今度の休みは何するの?
週末なにしたの?
髪の毛切った?
仕事は慣れた?
今どんなことしているの?
ベトナムの料理食べた?
…
さらには、果物をおすそ分けしてくれたり、ベトナムのお菓子をお土産で買ってきてくれたり、自身の小さい変化に気づいてくれたりなど。
このように、何かと気にかけてくれる人が多くいます。そしてこれは私が外国人だからではなく、ベトナム人同士でもこのようなやり取りを日常的に行っています。このように、普段からお互いのことを気にかける文化がベトナムにはあります。
相手を気にかける文化の背景
何歳ですか、どこに住んでるの、体重は何キロ、と聞くのは日本人の感覚では失礼にあたると思います。しかし、これはベトナム人が失礼ということではなく、いくつかの背景があると自分なりに推測してみました。
- お互いの呼び名を明確にする必要がある
ベトナムでは相手との関係性によって呼び名が変わります。この関係性は基本的には年齢によって分けられており、名前を呼ぼうとしている人が自分より年上か年下か、年上なら少し年上(兄ちゃん・姉ちゃん)、自分の両親くらい年上(おじさん、おばさん)、自分の祖父母くらい年上(おじいちゃん、おばあちゃん)という形で呼び名が変わります。基本的には相手の名前を呼ぶ前に関係性の呼び名をつけることがほとんどです(例:さとし兄ちゃん、さくら姉ちゃん、けんじおじさん等)。本当の家族ではないですが、相手の名前を呼ぶときは必ずこのように相手との関係性を示します。ベトナム人としては初対面だからこそ相手の年齢を聞き、その人との関係性を明確にしたい思いがあります。 - 距離の近い人間関係
日本でもひと昔前にはおせっかいおばさんがいたと思います。よく話かけてくる近所のおばちゃんであり、何かと気にかけて質問したり、おかずのおすそ分けをしてくれたり。ベトナムでは人と人との距離が未だ近く、このようなおせっかいな人がまだまだいます。お互いのことを気にかけるのが普通であり、逆にそのような気にかけをしないと少し冷たいという印象を相手に与えてしまいます。 - 村社会&貧しい過去による支え合いの精神
ベトナムでは昔から農業が盛んであり、村全体で協力し合うという精神があると思います。その上、戦争を何度も経験し、最近まで比較的貧しい思いをしてきたからこそ皆で豊かになっていこうという支え合いの精神もあります。少し補足させて頂くと、貧しい思いをしてきた人たちの中でも、自分だけが成功すれば良いと思う個人主義に走る場合があると思います。ただ、ベトナムでは伝統的に村社会であること、儒教が根付いていること、社会主義であり足並みを揃えるのが当たり前という価値観があるからこそお互いを支え合う精神が育まれたと考えられます。このような支え合いの精神があるため、お互いのことを気にかけ、必要であれば手助けをするという考えを持っているといえます。
個人的に思うこと
相手を気にかける行為は相手に興味を示している、あなたのことを気にしており必要であれば助けたいと思っている、という気持ちの表れであると言えます。そのため、ベトナムにおいて円満な人間関係を築くためには相手の小さい変化に気づいたり、特に用がなくてもふらっと話をしたりすることが大切です。さらに、変化に気づいたらそれを言葉にして直接相手に伝えることが大切です。例えば女性が髪型を変えたとしたら、まずはその変化に気づくこと、そしてその変化を褒めることが大切です。
私は日本人として、変化に気づいたとしても直接言うのは恥ずかしい・照れ臭いと思ったり、相手がどう受け止めるかわからないので発言しても問題ないか悩むことがありました。しかし、当たり前ですが、何も言わないと相手に何も伝わりません。勇気をもって相手に伝えるしかありません。私も最初は戸惑いましたが、これを続けていると職場のベトナム人は私が彼らを気にかけていることを理解し、私に対してもより一層気にかけてくれ、彼らとの距離が縮まったと感じました。
最近の日本だと、だれかを気にかけるという機会が減ったと思います。すでに友達だったり、中の良い同僚であればふらっと話をすることもあると思いますが、あまり接点のない職場の人とは話をする機会はほとんどないかもしれません。ましてや、その同僚の小さい変化に気づいたとして、それを口に出したり褒めたりすることはしないと思います。
でも、考えてみてください。ちょっとした変化に気づいてもらえるのはだれでも嬉しいことではないでしょうか。あなたも職場で何気ない変化に気づいてもらえたら嬉しいはずです(今まで全く接点のない異性の同僚から今日髪型変えたの、かわいいねと言われたら引く人もいるかもしれませんが、、)。まずは変化に気づけるよう意識する。そして変化を口に出して相手に伝えることが大切です。少し補足しますが、関係性ができるまでは自分の感想は言わないのが無難だと思います。例えば「あ、髪切ったんだね。かわいいね」ではなく、「あ、髪切ったんだね」に留めておく。かわいいね、似合わない、似合うなどの”あなたの感想”は相手との関係性ができてからがお勧めです。
変なトラブル(セクハラなど)にならない範囲で、変化に気づき、それを相手に伝えることをしてみてください。日本だとしても、相手は同じ人間です。普段から見てくれていると思うときっと誰でも嬉しく感じます。そして用がなくてもふらっと話をしてみたり、気になったことを質問したり、ぜひトライしてみてください。お互いの距離が縮み、今より円満な人間関係につながると思います。
最後に
今回はベトナムにおける「相手を気にかける文化」についてお話しさせて頂きました。相手に質問したり、何かと気にかける行為は相手への好意の表れであり、支え合いの精神の表れでもあります。
最近の日本人は他人への関心が薄い、もしくはあるけどそれを口に出さない人が多いように思います。でも、お互いのことを気にかけ、自由に会話がされている雰囲気の方が絶対に楽しいと思います。職場や近所付き合いなど、もう少し勇気をもって気にかけ、交流してみるのはいかがでしょうか。
人間としての欲求や希望はだれもが同じ。
オペラ・ウィンフリー 米国女性テレビ司会者
最初から職場での実践が難しければ、まずは周囲にいる家族、パートナー、彼氏・彼女に対して今よりもう少しだけ気にかけてみてください。細かい変化に気づく、最近の様子を聞く、そういった些細な事でも相手はあなたの好意を感じ取ってくれるはずです。
では、また。ゆとりのある日々を。
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