私はただいまベトナムに滞在しており、仕事を通してベトナムの文化や人々と触れております。日々過ごす中で、私が個人的に驚いたこと、面白いと思ったことを共有できればと思います。他国の文化・様子を知ることで、自身の生活にその考えを取り入れ日常が少し豊かになったり、改めて日本の良さを知ったりするきっかけになると思いますので、ぜひ読んでみてください!
今回は「奢り奢られ文化」について共有していきたいと思います。知り合いや友達と食事やカフェへ一緒に行くと必ずだれがどのように支払うかという話になると思います。男性が女性をデートに誘ったときは別かもしれませんが、日本では友達や同僚同士であれば割り勘にすることが多いと思います。しかし、ベトナムでは割り勘をすると嫌な思いを相手にさせてしまう可能性があるので注意が必要です。
奢り奢られ文化
ベトナム人と食事やカフェに行くと以下のようなやり取りが繰り広げられます。
美味しかったね。じゃあここは私が出すね。
いやいや、誘ってもらったんだし、それは悪いよ。せめて割り勘にしよう。
いいの、こっちから誘ったんだしここは出させて。
さて、あなたならこのあとどうしますか?日本人がやりがちな対応(ベトナムに来たばかりの頃は私もよくやってしまいました)は以下の通りです。
(謙虚なのかな。でも奢られるのも申し訳ないし、友達同士だし)
ほんと大丈夫だよ、半分出すよ!
…
実はこれ、相手の好意を踏みにじってしまうことになるので、要注意です。では正解は何だったのでしょうか。以下のやり取りを見てみましょう。
ありがとう!じゃあ次は僕が出すね!
分かった!
頑なに割り勘にしようとするのではなく、ここは奢ってもらい、次は自分が奢ってあげればいいのです。
奢り奢られ文化の背景
このような奢り奢られ文化には主に2つの背景があると感じます。
- 関係性の表現
ベトナムでは持ちつ持たれつの関係が多いと感じます。元々農耕民族であること、少し前まで比較的国全体が貧しかったこともありお互いが協力し合い、支え合っていくことが大切にされています。そこで関係性が非常に大事になり、その関係性の表現として奢り合う文化が醸成されたと思われます。このように交互に奢ることで「あなたとは何度も食事に行く仲ですよ」と表現しているのです。逆に、奢られるのを断り、割り勘を貫き通すと「あなたとは次があるか分からない」ということを表現することになります。 - ホスト側としての振る舞い
ベトナムにはホスト側が招待したお客さんをもてなす文化があります。由来ははっきり分かりませんが、おそらく中国の影響だと思います(中国でも同じようにホスト側がもてなす文化があります)。このような考え方は友達や同僚との食事やカフェでお茶する時も同じで、誘った側がホストとなり、その人が基本的には奢ります。上記関係性の話に繋がりますが、次は奢られた人が誘い、相手にご馳走することが期待されています。
補足ですが、このように交互に奢る文化は1対1の関係に限った話ではありません。数名でも同じようなことをやることが多いです。数名の場合は1回の金額が高いので複数名が奢る側という工夫もあります。
また、実際は奢り合うという気持ちが大切であり、その金額自体はあまり意識されていないように感じます。例えば、食事に誘ってもらい奢ってもらった相手とお茶をすることになり、コーヒーを奢ったとします。そうすると、前回の奢り分はお返ししたことになり、次はまた相手が奢る番になるのです。以前このようなことがあり、さすがに不公平じゃないか、次の食事もこっちが奢ると申し出たところ、「1回1回の金額は関係ないよ。今後も何回も行くから、合計したら同じくらいだろうし、今回はラッキーだと思えばいいんだよ」と言われ、はっとさせられたのを覚えています。
最後に
ベトナム人が関係性を重んじる人たちであることは「奢り奢られ文化」で感じられたと思います。もしベトナム人と食事に行く機会があればぜひ意識的に奢り、奢られてみてください。また、人との関係性は長い期間続くものであり、そのような関係性をぜひ見直し大切にするきっかけになればと思います。
人間は一人では生きられない。支え合うのが人だ。
瀬戸内寂聴
では、また。ゆとりのある日々を。
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