【海外での生活体験~アメリカ編~】クリスマスのプレゼント文化

文化

私は幼少期の約10年間をアメリカで過ごしました。その時の経験を踏まえ、私なりに感じたアメリカ文化について共有できればと思います。他の国の文化を知ることで、自身の生活にその考えを取り入れたり、改めて日本の文化の良さを知ることができると思いますので、ぜひ読んでみてください!

今回はクリスマス(本記事を書いたタイミングが12月)にまつわる文化を共有していきたいと思います。皆さんは今クリスマスプレゼントの準備に取り掛かっていると思います。恋人・子供へのプレゼント選びに悩んでいることでしょう。日本でもクリスマスにプレゼント交換をするという文化を作り出したのは間違いなくアメリカの影響だと思います。そこでアメリカのクリスマスの歴史を踏まえ、その上でアメリカの中でどのようにその文化が育まれているのか、見ていきたいと思います。

プレゼント交換の歴史:古代ローマから続く伝統

まず初めに、クリスマスという日はどのような日かご存じでしょうか?

サンタが子供にプレゼントする日でしょ?もっと意味があるのかな?

キリスト教:イエス・キリストの生誕日

実はクリスマスはイエス・キリストが生まれた日を祝うための日です。新約聖書では、イエスが生まれたときに、東方の三博士(Three Wise Men)がやってきて誕生を拝んだとされています。そしてその時にお祝いのために三博士がそれぞれプレゼントを渡したとされています。それらは黄金(王権の象徴)、フランキンセンス(和名:乳香、アロマオイルのようなもの。神性の象徴)、ミラル(和名:没薬、防腐効果が高く、傷薬やミイラへの腐敗防止にも使われていた。死の象徴)でした。子供に何をあげているんだと!と思いましたが、プレゼントそのものが重要ではなく、それらが象徴する意味合いが重要だったようです。

古代ローマ: サートゥルナーリア祭

さらに時代を遡ると、古代ローマからクリスマス付近でプレゼントを渡す風習があったようです。12月17日から23日までサートゥルナーリア祭(Festival of Saturnalia)が開催され、その期間はサートゥルナーリア神(農業の神)を称える日とされていました。この期間中、全員仕事をしてはならず、お酒を飲んだり、歌を歌って踊ったり、友人と会話したり、賭け事をしたり、プレゼントを渡し合ったり、さらに奴隷たちもこの期間中は自由が与えられ、全員で楽しむ期間であり、古代ローマで最も盛大なお祝いだったそうです。この時に交換されていたプレゼントはロウソク、季節的な飾り、ギャグプレゼントなどが中心で、親しい友人と楽しい時間を過ごすためのプレゼントが多かったそうです。

キリスト教はこの古代ローマの馴染みのあるお祝いとイエス・キリストの誕生日を結びつけることでキリスト教を多くの人に認知してもらい、12月25日がお祝いの日として認知されるようになったとされています。

高度経済成長期:クリスマスの商業化

そして第二次世界大戦後、アメリカの高度経済成長・アメリカンドリームにあやかったプロモーションが進み、クリスマスが徐々に商業化されていきます。宗教の側面ではなく、物質的な側面(家の飾り、プレゼント購入、豪勢な食事の準備)が注目され始め、キリスト教信者以外でもクリスマスは祝いの日として認知されるようになっていきます。

サンタクロースは宗教の面もありますが、商業的な側面も大きく、クリスマスのシンボル的存在がいることでプレゼントを子供に渡すことが当たり前の世の中になっていきます。

そしてそれらは世界中に広まり、日本でもサンタさんがプレゼントを渡してくれるかと気にする子供、その期待に応えてあげる両親という構図が出来上がります。クリスマスは大切な人と過ごす時間というのが日本でも認知されており、子供がいない場合でも恋人や妻・夫へプレゼントを渡し、一緒の時間を過ごす楽しい時間となります。

街全体で作り上げるクリスマスムード

アメリカでは12月に入ったらクリスマスムードが街を漂っています。車移動が基本のアメリカでは、ラジオ局はクリスマスの歌を流し、テレビではクリスマス関連の映画が日々放送されるようになります。お店もクリスマスに向けた装飾、関連商品の販売、店内でクリスマスソングを流し始めます。

さらに各自の家では、家や庭の木に電球をつけライトアップしたり、大きなクリスマスツリーをリビングに飾るなど準備が進められます。実際、12月の夜に車から外を眺めると、どの家もライトアップされており、とても美しい風景になっております。どこまで装飾・ライトアップにお金をかけるかはその過家庭次第ですが、より裕福なお家はそのような装飾もとても綺麗で、裕福さを象徴しているようにも思えます。うちも負けてられないや最低限の装飾をしないといけないと思い、装飾を購入する人もいると感じました。アメリカの競争社会も少し垣間見えましたが、街中が照らされているのを見るとやはりとても楽しい気分になるものです。

幼少期から育まれるプレゼント文化

家にあるクリスマスツリーの下に、12月24日にかけて徐々にプレゼントが増えていきます。通常、クリスマスでは親戚含めた家族全員が集まり、12月24日から美味しい食事やお酒を飲みながら楽しい時間を過ごし、翌日にはサンタさんからのプレゼントと家族のプレゼントを開ける時間になります。そして、プレゼントは親から子だけではなく、親戚との交換、子供から親へも渡します。このように当日集まる全員にプレゼントを渡す習慣があり、その分プレゼントはツリーの下にどんどん集まっていきます。クリスマス間近に友人の家に遊びに行った際に、プレゼントの量に圧倒されたことを今でもよく覚えております。子供も大人もプレゼントを開けるのが楽しみで、ワクワクした気分で12月を過ごすことができます。

それぞれの家庭でプレゼントを渡す文化がすでに出来上がっていると思いますが、実は学校でもその文化を育てるようになっております。私はアメリカ現地の公立小学校に通っていましたが、12月のある日に授業の一環として家族に渡すプレゼントを選ぶ時間がありました。学校側が複数(100種類以上)のプレゼントを1つの部屋に集め、その中で子供たちは誰に何をあげるか考えながら、欲しいプレゼントを人数分選択していくのです。欲しいと思ったプレゼントの番号と個数を紙に書いて先生に私、そのプレゼントが後日包装されて手元に届き、自宅に持ち帰りツリーの下に置いておくという流れになります。

各プレゼントは500円以下のもので、当然そのお金は親から出てきますが、そのように学校でも子供に対してプレゼントを選択・渡すという訓練がなされているのです。1年間の感謝を込めて、相手に喜ぶプレゼントを考えようとも言われながら、子供ながらに毎年継続してプレゼントを選択・交換しているのです。私たち家族も学校でそのようなことが当たり前に行われていたので、その風習にあやかって毎年プレゼントを家族同士で渡し合っていました。日本に帰国したあともその考え方は継続され、大人になった今でもクリスマスになると家族全員分のプレゼントをお互い購入し、プレゼント交換をしています。

最後に:プレゼントの受け渡し文化は家族への感謝を伝えるもの

そのように、街全体として学校も協力しながら、クリスマスに1年間の感謝を込めて家族とのプレゼント交換が行われます。そのプレゼントは親から子供へ、子供から親へ、そして親戚から親戚へと家族全員が参加するものです。子供たちはプレゼントを受け取る嬉しさ、与える喜びを経験しながら育っていくので、アメリカの方はプレゼントやサプライズが本当に得意だと感じます。私自身、プレゼントを家族全員に渡す際に、みんながそれぞれ何に興味を持っていて、何をもらったら喜ぶか、家族一人ひとりに想いを馳せながらプレゼント選びをします。その想いが家族への感謝につながります。

私はこの文化はとても素晴らしいものだと思っています。日本では家族間への感謝が少し少ないような気がしますが、このような機会が自然と感謝する気持ちが芽生えます。

クリスマスとは誰かのために何かを少しだけ余分にしてあげることだ。

チャールズ・M・シュルツ アメリカ漫画家(スヌーピー生みの親)

今年のクリスマスは恋人と過ごす日だけにせず、普段からお世話になっている家族・友人も含めて感謝を伝える日にしてみてはいかがでしょうか。

では、また。ゆとりのある日々を。

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