【世界を広げる】旅のドキドキ体験:エチオピアでのカツアゲ!?

世界

旅には新しい出会いや非日常体験、さらには危機やトラブルがつきものです。私が過去に経験した旅や出張の際のドキドキ体験を共有できればと思います。特段教訓があるわけではないですが、皆さんにとって「そのような世界があるんだ」という発見になればと思います。

今回のドキドキ体験が起きた舞台はエチオピア。この時、私は出張でエチオピアを訪れており、隣国のジブチへ向かう途中の出来事でした。

過去の旅を振り返りながら書いており、記憶が定かではないこともあります。また、読みやすいようにフィクションの部分が含まれている可能性がございます。尚、写真はすべてイメージ図です。


アディスアベバ(エチオピアの首都)から隣国のジブチには飛行機で1時間半程度である。

エチオピア航空の飛行機に乗り込み、音楽を聴きながら軽く読書をして小一時間で飛行機が着陸。

到着と同時に機内案内が流れた。いつもの着陸案内だ、と思いイヤホンを外さずそのまま音楽を聴き続けることにした。ただ、少しだけ何を言っているのか念のため確認しようと思いイヤホンを外すと、エチオピア語での機内放送だった。まあいいや、と再びイヤホンを装着。

ふと時計を見ると、まだ1時間しか経過していなかた。思ったよりかなり早く到着したな、ラッキー。航空会社は出発・到着時間にある程度余分な時間を設定しておくことがあるので、運が良ければ多少早く到着することもある。なかなか1時間半のフライトで30分も早まることはないが。。航空会社によっても時間設定は異なるので、エチオピア航空ではより長めに猶予時間を取っているのだろうと個人的に納得した。

とにかく、早めに着いたことはありがたい。着陸したにも関わらず、なかなか席を立たない人もいた。たまに旅慣れしていない人や大家族で家族全員を待って降りる人がいることは過去の経験で分かっているので、彼らを横目に颯爽と席を通り抜け、飛行機から降り立った。

飛行機から降りると、少し歩いたところに小屋のような小さい建物があった。

空港にしてはあまりにも小さく、「ジブチ恐るべし」と心の中でつぶやいた。周囲を見渡しても建物が全く見えず、高原が広がっているのみであった。すごいところに来てしまったと改めて痛感した。実際、今回の旅がエチオピア、ジブチともに初めての訪問だったため、どのような場所か全く見当がつかなった。それにも関わらず一人での出張だ。まずは本当にこの“空港”にお願いしていた車のお迎えが来るのか、という不安がよぎった。

さて、飛行機から降りてから歩くこと5分、小屋のような建物が近づいてきた。

入口には空港の警備員のような恰好をした恰幅の良い男性が立っていた。

特に何かしているわけではないものの、時々飛行機の乗客に声をかけ、チケットを確認しているようだった。私が建物の入り口をくぐるときに、その恰幅の良い男性が「チケットを見せろ」と低い唸る声で呼びかけてきた。外国人を意識的に狙っている様子で、少し嫌な予感がした。

しょうがないのでチケットを渡すと、私のチケットを見るなり「お前はそこに立って待っていろ」と指示された。何が起きているか分からず、とりあえず待つことにした。ただ、その間後ろの乗客がどんどん私を抜き建物に入っていた。何かの間違いかもしれない、別の職員にも聞いてみようと思いきょろきょろ別の職員を探してみると「動くな」と釘を刺される始末。

これはまずいな。嫌な予感が益々高まってきた。ただ、さすがに恰幅の良い男性と入国前に争いたくないので、諦めじっと待つことにした。すべての乗客が建物を通り終えてから(その間、恰幅の良い男性は何人かのチケットを確認していた)私に再度声をかけてきた。

「お前は間違えて降りた、ここはジブチではない」。

え?言葉は聞こえたが、一瞬理解できなかった。そしてすぐに頭が回転しだす。あれ、乗る飛行機を間違えたのか?でも飛行機に乗れている時点でそのはずはないが?騙そうとしているだけなのか?何が起きているのか。。

「ここの所長に合わせる。ちょっとついてこい。」

仕方なく、言われた通りついていくことにした。そもそも建物には部屋が2つくらいしかなく、所長室にはすぐに到着。恰幅の良い男性が所長に対して状況を説明し、私は不安に駆られながらとにかく待った。すると所長が椅子から立ち上がり、恰幅の良い男性に対して引き受けるというようなジェスチャーをした。

それを見た恰幅の良い男性はうなずき、私は所長と二人きりになった。所長は40代くらいの男性、空軍の制服のような服を着ており、カキー色の全身に茶色のブーツという身なりだった。

所長が私に近づき、口を開いた。「パスポートを見せろ。」

パスポートを手渡すと、所長の席の横にあるコピー機で私のパスポートをスキャン。そしてパスポートを返却すると否や再度話しかけてきた。

「ここはジブチではなく、まだエチオピアだ。ジブチ行きの乗客はそのまま飛行機に残らないといけない。」

私はようやく状況を理解できた。この飛行機は2か所、エチオピア北端とジブチに立ち寄る運用となっていたのだ。受付でチェックインしたときや、チケットにもそのような案内が全くなかったが、どうやらこの飛行機は“各駅停車”のような仕組みのようだ。トランジットという別空港で飛行機を乗り換えたりすることは良くあるが、同じ飛行機が別空港で“停車“するというケースは初めてだった。私は飛行機が着陸したので何も考えずに降りてしまったのだ。確かに今思い返すと、通常より多くの乗客が席から立ち上がっていなかったことを思い出した。

後ろを振り返るとまだ飛行機が残っていた。今から走ればまだ間に合いそうだ。所長には感謝を伝えすぐに飛行機へ引き返そうとしたら、所長に止められた。

「間違えたとはいえ、一度離陸してしまったのであれば再度荷物・身体検査をする必要がある。運良く、急げばまだ飛行機には間に合うはずだ。まずは荷物検査へ。」

そういわれると、所長の部屋を出て、隣にある荷物・身体検査へ案内される。もうすでに小屋みたいな建物には私と所長と、恰幅の良い警備員しかいないため、待ち時間もなくすっと荷物検査のところへ。よし、これなら間に合う、と思ったらまた所長に止められた。

「もっと言うと、すでに降りてしまったため、本当は(飛行機の)チケットを再度購入してもらう必要がある。ただ、さすがにそこまで求めるのはかわいそうだと思う。ただ、その代わり分かるよな?」

分かるよな?といった顔はいやらしい笑顔だった。こ、これは。。大人の世界の“カツアゲ”だ。こういうことは対応しない方が良く毅然とした態度を取るべきという人と、求められればもめてより大きな問題に巻き込まれる可能性もあるので素直に対応した方が良いという話を事前に聞いていた。

飛行機がいつ出発してしまうか分からない、そして今、この場所には自分と所長と恰幅の良い男性しかいない。だれも自分を守ってくれない、と思い、素直に所長の要求に応えることにした。このようなことが起きてもごまかせるように、実はパスポート入れに現金(米ドル)を忍ばせていたのだ。(我ながらファインプレイだったと思う。)

財布を出すとすべての現金が見られてしまい、より多くの金額を要求される。そこで財布はスーツケースに預けておりもっていないと説明し(背負っているリュックに本当は入っているが)、パスポート入れを出した。そしてそのポケットに忍ばせいて1ドル札を取り出し渡した。

所長は1ドル札を見るなり笑った。「ガキのお小遣いじゃないんだから、もっとあるだろ?」

さすがに1ドル(今のレートでは約150円)では乗り切れないようだ。もっとあるか探してみる(という小芝居を打ちながら)、あったとパスポート入れの別ポケットから10ドル札を取り出した。

これを所長に手渡すとニヤッと笑い、日本人は物分かりが良くいい人が多いから好きだと言って、荷物検査・身体検査を通してくれた。

そして小屋のような建物の出口に到着すると、恰幅の良い男性に飛行機に向かってあるくよう指示された。私は小走り気味に飛行に向かい、飛行機に搭乗するための階段を駆け上った。CAさんがチケットを見せるようにとお願いされたので、ドキドキしながら間違えて降りてしまったと説明しながらチケットを見せた。

そして無事飛行機に戻ることができた。私が飛行機に戻ってから約5分後、飛行機は再度出発して(今度は本当に)ジブチに到着した。


こうして、私のドキドキ体験は幕を閉じた。

あのままエチオピア最北端に取り残されたたらどうなっていいたのか、と今でも想像するだけでぞっとする出来事でした。最悪を想定した事前準備(現金を小分けにして持っておく)や新しい場所では慢心しない(機内アナウンスをしっかり聞けるようイヤホンをしない等)などが必要であると認識させる強烈な出来事でした。

本当は“カツアゲ”に対応するべきではないという意見もあると思うので、あまりこの話を声を大にして共有することは憚れるが、それでも11ドルで自分の無事が確保でき、貧しい国の現地の方が満足するならそれでもいいのでは、とも思ってしまう。所長が恰幅の良い男性にも分け前を与えてあげていることを願うばかりです。

では、また。ゆとりのある日々を。

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